永続する同族企業“エノキアン協会”
企業が永続する秘訣は何か?について、このところ調査しているが、先日、中小企業診断士の先輩であるT先生から、「エノキアン協会」という協会があり、この協会の会員は、同族経営でありながら、長い歴史の風雪に堪え、今日まで堅実な経営を維持しているということを教えて頂いた。
同族企業にも優れた企業もあり、またそうでない企業もあるが、後者の評価としては、“ワンマン経営者”という言葉が思い浮かび、従業員の向上意欲が削がれるような企業風土の下で、前近代的な経営が行われているような負のイメージがある。
しかし、このエノキアン協会は前者の優れた企業に属する。
さて、「エノキアン協会」であるが、1981年、フランスのリキュールメーカー、マリー・ブリザール社の提唱により設立された。
同協会設立の趣旨は、会員がより良い友好関係を築くことによって、「伝統こそ活力」を世界に訴えることを目的としている。
そして、波乱の歴史を生き抜き守り育ててきた伝統の技術や家族のぬくもりが社会に欠かせないものであることを訴え、同時に若いアルチザン企業(=職人的技術力をもつ企業)との連携を目的としている。
入会の条件は、次の通りだ。
①創立200年以上の歴史を有する企業であること。
②創立者が明確で、その同族が現在でも経営権を持っていること。
③財務的に経営状態が良好な個人企業または法人。
加盟企業には、ワイン、ガラス製品、宝石などヨーロッパの伝統企業が名を連ね、イタリア15社、フランス10社、ドイツ4社、日本4社、スイス2社、オランダ、スペイン、北アイルランド、ベルギー各1社の計39社で構成されている。
日本からの参加企業は次の4社だ。
① 法師(718年創業、温泉旅館業:石川県粟津温泉)
② 月桂冠株式会社(1637年創業、酒造業)
③ 岡谷鋼機株式会社(1669年創業、商社:名証1部上場)
④ 赤福(1707年創業、和菓子製造・販売)
http://www.akafuku.co.jp/index.html
赤福は、昨年、品質関連で問題を起こしたが、この失敗を糧に立ち直って欲しいものだ。
これらの企業に共通するのは次の通りだ。
1) 危機に対して柔軟で創造的な適応をなしうる。
2) オリジナルな品質への限りないこだわり。
3) 後継者の育成への注力
4) 過度な成長、過度なパワーを望まない。
5) 社会に受け入れられる企業文化の確立。
そしてその文化を経営者のみならず、
全社員にも連綿と継承している。
これらの共通点はいずれも、企業を永続させようと考えている企業の経営者にとって大変参考になる!
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法師のホームページを見ると、繁栄の三ヵ条として、
① 時代の流れに浮つかず、常に足元を見る。
② むり・むら・むだを楽しむ。
③ 誠の心を持って、お客様にも社会にも奉仕し、
そのために全社員が協力しあう。
とあり、上記の共通点との一致点が理解できる。
①については、常に顧客の声に耳を傾け、しっかりと足元を見た上で、時代に即した改革を施していく。守るべきものと、変えていくべきものを明確にする、という経営哲学を感じさせるものである。
この「守るべきものと、変えていくべきものを明確にする」という経営哲学は、「不易流行」という俳句の作法の原則を謳った松尾芭蕉の言葉に通じるものだ。
(補足:サントリー㈱に不易流行研究所というのがある)
参考:「エノキアン協会」ホームページ:http://www.henokiens.com/index_gb.php
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コメント
昨年春、企業が永続する秘訣を調査中とお書きになっていたのを発見し、嬉しくて書き込みました。
私は過去10年にわたり、国内の老舗企業(100年以上存続)データベース構築に励み、2万社を発見しました。持続的成長の要点を分析する一方、同様の国際データベースを作成しており、TBSテレビ、NHK、日本経済新聞「200年企業-成長と持続の条件」などご覧頂いているかも知れません。
何かお役に立てることがあれば幸いです。
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〒431-1202 浜松市呉松町1955-1
光産業創成大学院大学
教授 後藤 俊夫
tsgoto@gpi.ac.jp
℡053-484-2501(内)2280
Fax053-487-3012
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投稿: 後藤 | 2009年4月23日 (木) 14時33分
ありがとうございます。
先生の調査・分析内容を勉強させて頂こうかと
思います。
投稿: やぎ | 2009年4月23日 (木) 18時07分