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2008年7月27日 (日)

渋沢栄一が行動規準とした孔子の論語

孔子の「論語」は、今まで、ためになるとは思いながらも、しっかりと味わって読んだことがなかった。味わった読まなかったのは、論語と日常生活或は現代の世の中との間に乖離があり、論語をどのように解釈し理解すればよいかがわからなかったというのが正直な気持ちである。

最近、幾つかの論語に関する書籍を買い求めて読んでいるが、その中のひとつに、竹内均著「渋沢栄一・ 論語の読み方:三笠書房」という書籍がある。

この書籍は、明治の初期に書かれたものだが、現在の世の中においても、なお通用する普遍性を感じさせる。何よりも論語が説く人生訓を、歴史上の人物などの例を挙げてわかりやすく説明しているいところが面白く興味深い。

日本における資本主義的経営を確立したと言われる渋沢栄一は、孔子の「論語」を行動規準にしていた。

現在の日本における資本主義体制の中、ただ金儲けをするだけを目的とし、社会的奉仕・貢献を忘れた経営者が多く垣間見られる中で、渋沢栄一の考えは、現代においてもなお、正しい倫理感をもって経営を行うことの必要性を教えてくれるものであり、新鮮味を感じさせる。

今回、ビジネスに関連した内容の一部をご紹介するが、今後も時々、継続してためになると思われる内容を紹介してゆきたい。
以下はその内容である。

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「論語」は一言一句がすべて実際の日常生活に応用がきく。読めばすぐに実行できるような基本の道理を説いている。これが私が儒教のうちでも特に「論語」を選んで、これを守り実践しようとしている理由である」、

更に、「私が実業界に身を委ねるようになったのは、国力を充実させ、国を富ませるためには、まず農工商、なかでも商工業を盛んにしなければならないと考えていたからである。

そこで、会社をうまく経営するにあたって、いちばん必要な要素は会社を切り回す人材である。人材が得られないならば結局その会社は必ず失敗する。そこで私は、実際の運営に当たる人に、事業上だけでなく一個人として守り行うべき規範・規準がなくてはならないと考えたのである。

このように考える時、日常の心得を具体的に説いた「論語」は、その規準にうってつけで、どう判断してよいか悩む時には「論語」のものさしに照らせば、絶対間違いがないと確信しているのである」

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 子曰く、富と貴とは、これ人の欲するところなり。その道を以ってこれを得ざれば、処(お)らざるなり。貧しきと賤しきとは、これ人の悪(にく)む所なり。その道を以ってこれを得ざれば、去らざるなり。[里仁]

 解釈:富と地位とは万人の欲するところである。しかし、これを得るためにはそれ相当の方法がある。つまり学を修め功を立て、身をつつしみ徳をそなえることだ。富貴そのものはもとより悪いものではなく、青年の目的としてもよいが、これを獲得する手段方法については、慎重な態度が必要である。

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 上の論語の教えの例として、渋沢栄一は次の例を挙げている。

三井家は徳川二代将軍秀忠時代に伊勢国松坂で、三井宗寿という人が呉服屋を始めたが、その頃すでに相応の財産を持っていたらしい。この時代の富豪はもっぱら大名に金を貸して利息を取るのが商売で、これにより利益を得ていたが、宗寿は富豪が金貸しばかりして世を渡るのはよくない、実業をしなければ真の社会奉仕ではないと考えて、呉服屋を開業したそうである。この商売のやり方が、世人の便利を計ることにあったので、大いに繁昌したのだという。「積善の家に余慶あり」という通り、三井家が今日まで繁昌したのは偶然のことではない・・・・と述べ、

次のように結んでいる。
算盤(そろばん)をとって富を図るのは決して悪いことではないが、算盤の基礎を仁義の上においていなければいけない。私は明治6年に役人をやめて、民間で実業に従事してから50年、この信念はいささかも変わらない。あたかもマホメットは片手に剣、片手に経典を振りかざして世界に臨んだように、片手に「論語」、片手に算盤を振りかざして今日に及んでいる。

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