日本における平等神話の崩壊
最近、中谷巌氏の著作「資本主義はなぜ自壊したのか」を読んでいる。
中谷氏と言えば、かって小泉内閣の時代、改革の一翼を担った方である。同氏は、最近の日本の状況を危惧し、市場経済至上主義(同氏はグローバル資本主義という表現を用いられている)に疑問を呈し、この著作は自戒の念を込めて書かれた「懺悔(ざんげ)の書」であると、まえがきに書かれているのがじんとくる。
私は小泉内閣の時代に実施された施策については、良い面もあったし、悪い面もあったと思う者である。それ故、中谷氏がこの著作の中で言われているように、小泉政権は、財政投融資制度にくさびを打ち込んだり、官僚制度の一部を打ち壊したりするなど、大きな成果を挙げたが、他方、市場経済至上主義の行き過ぎから来る日本社会の劣化をもたらした。たとえば、この20年間のおける「貧困率」の急激な上昇は日本社会に様々な歪をもたらし、また救急難民や異常犯罪の増加など、負の遺産を残した、ということには同感だ。
グローバル化は日本社会における伝統的価値の良き面を変質させ、かって日本に存在していた相互信頼を失わせつつある。グローバル化の悪い側面は阻止しなければならない。
中谷氏によれば、なかでも最近の日本における格差拡大は、これを放置すれば、日本社会に深刻な亀裂をもたらすといわれているが、全くその通りだ。
OECD(経済協力開発機構)のレポートによれば、この20年間に日本の所得分配が大きく変化している。中でも「貧困率」の国際比較のデータを見れば唖然とする。
貧困率とは、それぞれの国の勤労者の中で、中位所得者が稼いでいる所得の半分以下の所得しか稼いでいない貧困者が全勤労者に占める比率のことである。
それによると、再配分前(国家による課税や社会福祉がなされる前の段階)における日本の貧困率は、1985年の段階では12.5%であり、当時のOECD主要国やアメリカと比べると極めて低い数字であった。ところが20年後の2005年には、12.5%から26.9%まで跳ね上がった。
また、再配分後の数字は、2005年、14.9%となっており、これだけをみると日本政府は貧しい世帯に対して配慮をしているかのように見えるが欧州諸国と比較すると、再配分政策による下げ幅が小さく、日本はアメリカについで貧困者に冷たい国になっている。
所得格差の増大は、日本の将来の健全な発展を阻害する。できるだけ早くこれを是正し、長期的な観点より政治を正さなければ取り返しがつかなくなる。
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