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2009年8月12日 (水)

家族の絆について

一度訪れた町は何となく愛着を感じるものである。つい先月訪れた広島県・尾道に関する新聞記事が目に留まった。その記事は往年の名作である映画「東京物語」について描かれていた。

この「東京物語」は1953年(昭和28年)に制作された松竹映画で、小津安二郎監督、笠智衆主演の日本映画である。その後、テレビドラマとして何度か放映されたらしいが、私は観たことがなかった。新聞記事を読んだ後、映画そのものを観たいという衝動に駆られ、近くのツタヤでCDを借りて観た。

物語は、今のうちに成長した子供達(5人の息子・娘を持つ)に会っておこうと、広島・尾道から東京を訪れる年老いた夫婦(笠智衆、東山千栄子が演じる)と、忙しさのためか、それを快く思わない子供達を通して、家族の絆、親と子供、老いと死、人間の儚い一生、を冷徹な視線で描いた作品である。

現代における核家族化や高齢化社会における家族の絆、といった問題を先取りしたようなテーマであると、ある映画評論誌は述べているTokyo_monogatari_poster_2_2が、私もそのように思えた。最近、SNSでも家族の絆に触れられている方がおられたことも、この映画を観てみたいと言う私の気持ちを後押ししてくれた。

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場面は戦後間もない、まだ日本が貧しい時代である。さて東京へ出てきた老夫婦であったが、長男も長女も毎日忙しく両親をかまってやれない。

寂しい思いをする二人を気遣って慰めてくれたのが戦死した次男の嫁の紀子(原節子が演じる)であった。

尾道に帰った母は脳出血で倒れて間もなく亡くなる。葬儀のためやって来た実の子達は形見分けのことまで口にしてあわただしく帰って行き、次男の嫁だけが数日間、舅のもとに残った。

また、次女で一番若く、独身で、尾道で小学校の先生をしている京子(香川京子が演じる)は自分本位に考える兄や姉に対して怒りを感じるが、兄嫁の紀子には親しみを感じる。

その嫁も今日は東京へ帰るという朝の場面がこの映画のクライマックスであり、次のような舅と嫁の会話が続く・・・・・・・

「次男のことなどは忘れてもらっていい。縁があったらお嫁にいっておくれ」と舅が告げる。

「自分を買いかぶらないでほしい」と嫁が言う。「買いかぶっとりゃせんよ」と舅が言う。
「いいえ。わたくし、そんなおっしゃるほどのいい人間じゃありません」「いや、そんなこたあない」「いいえ、そうなんです。あたくし、ずるいんです」と二人の会話が続く。

嫁は、夫のことばかり考えてるわけじゃない、忘れている日もあると言い、「わたくし、ずるいんです」と三度繰り返す。そして、一日一日が何事もなく過ぎてゆくのがとても寂しい、どこか心の隅で何かを待っている、という本心を吐露したあと、

笠が演じる舅が「ええんじゃよ、それで・・・やっぱりあんたはええ人じゃよ、正直で・・・」 と述べ、嫁を案じるくだりが胸を打つ。
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この映画は小津映画の集大成とも言える作品で、日本映画の最高傑作とも言われているし、海外でも高く評価されている。細やかな人間描写が、モノクロ画面の中で一層生かされており、主演の笠智衆を始めとして、原節子、香川京子、東山千栄子等の俳優人の演技は素晴らしい。

そして、この映画は、文明の進化と共に、家族が一緒に生活する基盤が狭まり、家族の繋がりが希薄化する方向にある現代を憂えている。だからそのようにならないように努力・工夫しなければならないと警鐘を発している様に思えるのだ。当時と比べて核家族化が進行しつつある現在の世の中においては、一層このことの重要性が感じられる。

by 八木: http://homepage3.nifty.com/yagikeieioffice/

Tokyo_monogatari_poster_3

 

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