先日、CSシリーズ進出を決定し、更に2位を窺う東北楽天ゴールデンイーグルスの躍進は、何ごとでも、皆が一致協力すればできるんだなあ、という教訓や希望を与えてくれる好例である。
そもそも楽天球団は、近鉄球団の経営不振を契機に生まれた球団である。今から5年前、近鉄球団が廃団となり、10球団1リーグ制度が当時のプロ野球関係者の間で議論されたことがある。その時、選手会が経営側に対してストを打ち、またファンが2リーグ制維持を支持して、生まれた球団である。
当初、選手集めが大変だった。本来、廃団となった近鉄球団の選手は、吸収先のオリックス球団と2分されるべきだったのにもかかわらず、殆どの選手がオリックスへ引き込まれた。そんな一からの出発であった。初代の田尾監督、現在の野村監督と、このようなチームをよくここまで育て上げたものだ。
これは朝日新聞に掲載された記事からの抜粋であるが、チームのリーダー的役割を演じている山崎剛司選手の手記を読むと、球団創設時からの苦労話がよく伝わって来て、思わず涙を誘われる。
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・・・・楽天に来て、よかった。オリックスをクビになった時にやめなくてよかった。4年前、久米島のキャンプに行った時のことを覚えている。自由契約になって不安いっぱいの俺がいうのも何だけど、メンバーを見て「ひでえな」と思ったね。捨てられた選手の集まりだもん。練習の仕方もわからない、連携もカットプレーもできない。環境面も1年目はフルスタのロッカーは狭くて、シャワーの水もあまり出なくてね。・・・・・・・・・
試合は連敗、連敗で本当に勝てない。結局、38勝しか出来なかった。だから1勝の喜び、重みを感じるようになった。どんな不細工でもいいから勝つように若手を仕向けない、という気持ちが出てきた。技術的なことはしようがない。でも、その前の戦う姿勢がないとかボーンヘッドとかは、めちゃめちゃ怒ったね。・・・・例えば青山。1塁のベースカバーを何度も怠ったときは、心を鬼にしてひっぱたいた。ワンバンドを体で止めない嶋にも言ったね。お前のミスで、どれだけみんなの生活をダメにしてるんやと。永井は逃げの投球でKOされた時、ベンチで説教した。今年、ようふた桁勝ってくれたよね、うれしいよ。最近では鉄平。中日の後輩でかわいいし、リーダーシップを取って欲しいから厳しく言った。首を痛めて欠場した日、ミーチングでやり玉に挙げたよ。痛いって言い過ぎなんじゃと。・・・・・・・
・・・・野村監督に出会って(自分自身も)大きく変わった。それまでは何も考えず、配球データも見たことがなかった。データや監督の教えを参考にするようになって、沢山打たせてもらった。三振を怖がらなくていいと言われたのも大きかった。読みが外れたら「ごめんなさい」で帰ってきていいと。嬉しかったのは、07年の4月。全く打てず、ああ、これで引退していくんかなという気持ちだった。元気のなさが顔に出てたんだろうね。監督が打撃ゲージまで来てくれて「まだ4月やぞ。ベテランなんだから、焦らずやれや」と言ってくれた。すごく楽になった。あの時からエンジンがかかって2冠王(本塁打、打点)が取れた。だから、監督には優秀の美を飾らせてあげたい。是非、胴上げしたいね。・・・・・・・・
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野村監督は、自身の下積み経験があるためか、他球団でお払い箱になった選手を再生する手腕では有名だ。楽天に来てからも、山崎選手が自身の才能を遅まきながら開花させたし、中日では目の出なかった鉄平を今期、首位打者有望になるまでの状態に開花させた。草野、渡辺直の三遊間は社会人出のドラフト下位指名。他球団なら年齢を考えて獲得しなかっただろう、と野村監督は述べている。その他、適材適所で、選手の長所をうまく引き出している。勿論、岩隈選手や田中選手などの陽の当たる選手の活躍は言うまでもない。
楽天球団の経営方針もしっかりとしていた。地域密着主義に徹し、仙台を始めとした、東北地方のファンを獲得しようとファンサービスに努めた。若手選手による小学校訪問などはその一例である。そして今期の平均来場者数は1万6700人を超えた。
by 八木: http://homepage3.nifty.com/yagikeieioffice/
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