東大阪・まいど衛星・打上げ成功物語
昨年の1月23日、H-ⅡA人口衛星が打ち上げられ、東大阪がその喜びに沸いたのは記憶に新しい。打ち上げ後「まいど1号」と命名された。
先日、この人口衛星の開発に当初から携わって来られた㈱大日電子代表の杦本日出夫さんの講演を聴いた。講演会の主催は大阪販売士協会。テーマは、東大阪のおっちゃんと若者の夢・プロジェクト「まいど衛星」打ち上げ成功物語~「やりました夢の実現! 「まいど衛星」自社経営に活かす衛星開発」であった。杦本さんは現在、東大阪宇宙開発協同組合理事長をされている。
この宇宙からの雷雲観測という使命を担った人口衛星の開発過程は、弱小な中小企業の方が集まってプロジェクトをまとめていく難しさとそれを打破していく努力の連続であり、傾聴に値するものであった。
当初プロジェクトの話があって集まった企業は100社余り、最終的に残ったのは13社であった。そして自分達だけではできないと痛感し、宇宙航空研究開発機構に協力を依頼することから始まった。その後、大阪府大や龍谷大、大阪大学から協力を受けた。
杦本さんは、苦労したこととして、幾つかのことを挙げられていた:衛星についての勉強を約1年間、本業の仕事が終わってから夜、皆で勉強したこと、皆が親分気質をもった人なので調整が難しかったこと、宇宙環境(真空、高温、放射線、振動)に耐える部品の開発が大変で試行錯誤を繰り返したこと、それらの部品が高価であり失敗が許されなかったこと、等々。
衛星に用いられたのは、既存の枯れた技術であったという話が興味深かった。実績のない新規の部品は人口衛星には向かないということである。
さて、このような開発を通じて、様々な経営的な成果が得られたという。各自のモチベーションアップ、整理・整頓・躾などの基本を徹底することによる仕事のムダの軽減、コミュニケーションの改善、等。 これらによって3K(感謝、気遣い、謙虚さ)の社内風土が醸成されたという。
最後になるが、杦本さんは、ものづくりの大切さを子供達に知ってもらうために「人口衛星まいど1号」の絵本を作られた(写真添付)。私も買い求めたが、なかなか上手くできていると感じた。
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コメント
今から20年位前のことですが、防衛関係の仕事で開発したいと要請のあった半導体素子の企画が米国の軍用機核に基づくものでした。それは、当時の水準でも民需関係では絶対に使われないような古いカテゴリーの素子でした。
宇宙空間では部品交換に出かけるわけには行かないので消費電力や性能よりも、実績があって、信頼性を予測できることが何よりも重要なのだということが良く解ります。
まいど衛星も、新規開発して、それを信頼性確認できるまでの評価をしていたら予算的にとてもできなかったでしょうね。
投稿: 村上一仁 | 2010年1月24日 (日) 10時43分
コメントありがとうございます。
宇宙開発における信頼性の重要性が良くわかりました。
投稿: やぎ | 2010年1月24日 (日) 21時40分