東洋理機工業㈱ ・・・・・ロボットシステムインテグレーターの旗手
大阪市西淀川区御弊島。この辺りには鉄鋼業などの大きな企業の工場がひしめく。その一角、JR東西線加島駅から徒歩10分ばかりのところに東洋理機工業㈱があった。玄関を入ると細見成人社長が笑顔で迎えてくれた。(下の写真は細見社長)
東洋理機工業㈱は、産業用ロボットのシステムインテグレーター(ロボットエンジニアリング)をメインの事業にしている従業員20名の小さな会社だ。 現在、ロボット分野で、我が国は世界の先頭を走っているが、同社の仕事はロボットメーカーが開発したロボットを顧客の要望に応じて最適な作業をするシステムに作り上げることだ。
得意とするのは多種多様なハンドリング。これに加えて最近では独自開発のカスタムロボットの分野への進出も始めている。
同社は、戦後間もない1948年、細見さんの父が始めた製鉄所関連の設備をつくる鉄工所がスタート。様々な分野の顧客の要望により生産設備の省力化・合理化・自動化のサポートを行って来た。
細見さんは、大学を卒業後、神戸製鋼所の機械研究所でタービンやターボコンプレッサーの研究開発を行って来たが、自分のやりたいことをしたいと思う気持ちが強く、それならば中小企業がよいということで、父の後を引き継いだ。元々機械や電気が好きだったが、家業の主軸であるロボットに興味を持ったのは、早稲田大学時代に師事した故・加藤一郎教授の影響が強い。同教授は世界で始めて二足走行ロボットを開発したことで知られている。
同社の最近の歩みは次の通り。
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「3K職場(きつい、汚い、危険)の過酷な作業や、特殊環境下での作業はロボットに! 人はより創造的な仕事に! 」 という思いを込めて産業用ロボットのシステムインテグレーターとして事業を開始。
1982年より産業用ロボットのマニプレーター及びハンドの開発をスタート。以来、産業用ロボットをニーズに合わせてカスタマイズし、システムインテグレーションすることにより有効で役立つロボットアプリケーションシステムを開発し、生産現場の生産性向上に寄与して来た。現在までに、ハンドリングを中心に200以上のロボットシステムの納入実績がある。
従業員20名という少ない陣容で、機械設計、電気設計、制御システム、システム設計、製造、据付、ロボットのティーチングまで、ハードの外注を除けば、全て社内でこなす。
2005年より新たな分野として始めたのが、コミュニケーションを中心としたより人間に近づいた次世代ロボットを実社会で稼動させるための用途開発だ。2003年には、大阪市の次世代ロボット開発ネットワーク「RooBo」の創設メンバーの一人となり、更には現実の用途に合わせて使えるよう、ロボットシステムをイージーオーダーするカスタマイズチームを立ち上げ実用化を進めている。最近では、病院の入院患者向けに「病院夜間出入口安全見守りロボット」や食品メーカー向けにキャラクターロボットを納入した。
将来的に目指すのは、産業ロボットの用途として、製造業に限定せず食品、化学、医薬品分野や広くサービス分野でのロボットの用途開発を図ること及び少子高齢化での労働人口減少に対する熟練職人の技能伝承を図ることである。
前者については、たこ焼きロボットやお好み焼きロボット(人と同じ道具を使ってお好み焼きをつくる15軸の双腕ロボット)を開発し、ロボットの巧みな動きとその汎用性を関係者に訴求し、ニーズを探っている。後者については、熟練を要する鍛造作業について、ハンマーの力加減や状況を分析・学習しながら作業をするロボットやグラインダ研磨作業をするロボットの実証実験を続けている。成功すれば世界初である。
更に、汎用ロボットでは適用が困難な分野には、そのニーズに適したカスタムロボットをゼロベースで開発し、提供する。これは特定用途向けの専用ロボットであるので、シンプルでコンパクトであり、ティーチングレスで機種変更可能というメリットがある。
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同社には社長の細見さんを除けば、専任の営業人員はいない。顧客としては、神戸製鋼所、小松製作所、日本鍛工などの装置メーカー、安川電機、ファナックなどのロボットメーカーが挙げられるが、これらの顧客の要望には何でも好き嫌いなく応えて来た。このことが特に営業活動しなくても自然と仕事が舞い込むことにつながっている様だ。納入先リストには我が国の有数の大手メーカーが名を連ねる。
社員の平均年齢は40歳と比較的若く、現場を見せて頂いたが、社内は家庭的でフレンドリーな雰囲気に満ちている。そして皆が自社性を発揮するとともに、協力して仕事をしている様子がひしひしと伝わってきた。(下の写真はロボットシステムの調整作業をしているところ)
今後の経営についてお伺いしたところ、自然体で経営を考える。やたらに売上を上げようとせず、世の中の自然な需要に応えていきたい、また中小企業同士のコラボレーションにより、コアー技術を持った企業が協力してやっていくような体制を築いていきたいと言っておられた。
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コメント
はじめまして、今お好み焼きロボットを拝見してびっくり、感動しました。私は美容師で、ロボットがヘアーカットするのは不可能だと思っていましたが、私が開発した、櫛と理論(大した物ではありませんが、一応特許取得しています)を使えば人型ヘアーカットロボットは出来ると思っていたところに、お好み焼きロボットを発見してしまいました。いつの日か絶対作りたいと思っていたのに、御社の技術があればすぐにでも完成がイメージできます。
先日NHKにも取り上げていただきましたが、やっと商品化したばかりで、まだやらなければならないことが山ほどありますが、将来の夢のために、お話など伺えたらと思っています。
どうぞ宜しくお願いいたします。
投稿: カットちゃん | 2010年8月 6日 (金) 23時15分
ごめんなさい、興奮して、東洋理機工業さんのブログと感違いして、送信してしまいました。
失礼いたしました。
投稿: カットちゃん | 2010年8月 6日 (金) 23時21分
カットちゃん様
コメントありがとうございます。
ロボットについては東洋理機工業さんに一度、問い合わせて下さい。
投稿: やぎ | 2010年8月 9日 (月) 18時43分