吉泉産業(株)・・・食品用フードスライサーのトップメーカー
大阪府枚方市の工業団地・津田サイエンスヒルズにある吉泉産業(株)を訪問した。同社は、国内トップシェアを誇る食品用フードスライサーから食品用洗浄・脱水機まで自社製造する食品加工機の総合メーカーである。
玄関を入ると、綺麗な展示室があり、”クリーンで明るい”会社の雰囲気が直ぐに伝わって来た。2階へ続く螺旋状の階段を上ると事務所があり、社長の佐々木啓益さんと社員の方々に明るい笑顔で迎えられた。事務所は、幾つかの各部門の部屋がガラス張りの戸や壁を介して繋がっており、見通しが良く、透明感が溢れていた。
吉泉産業(株)は1955年創業。先代である現社長の父は刃物に熱処理を施し、切れ味が良く独創性の高い刃物を作り出す職人であった。その先代が丸刃型の万能スライサーの開発に成功したのが1965年。最初はうどん屋チェーン向けに自動ねぎ切り機を開発し納入していた。
その後、共働き所帯の増加など、世の中の変化に呼応して、スーパーやコンビニエンスストア、外食チェーンにおける総菜やカット野菜など、調理に便利な食材のニーズの高まりもあり、業容を拡大した。「食材を合理的に、美しく切る」が同社のアイデンティティだ。
業容拡大の中で、同社にとって思いで深い話がある。それは、あるスーパーからの依頼で、職人のように魚の切り身が切れるスライサーを開発して欲しいという依頼であった。顧客が求めているものを開発しないと生き残れないと感じ、引き受けることにしたが、苦難の道であった。試行を繰り返し、ようやく成功したが、当初3年で開発する予定をはるかに超え8年が経過していた。しかしながらこの時の苦しみがあってこそ今日の吉泉産業があると佐々木さんは言っておられる。
さてこの魚の切り身スライサーであるが、この装置に、例えばサケの半身を入れると重さが均一のサケの切り身が次々と出てくる。その速さは50枚/分ほど。従来のスライサーは、切り身の重量に10g程度のバラツキが出てしまうのが普通であった。しかし同社のスライサーは、同じ重量で形の整った切り身を短時間に用意できる。その切り分ける速度も1時間に2800枚と他社の商品に比べて高速である。(写真は鮭の切り身ライン)
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さて、同社の製品と販売先のことであるが、同社の製品は、商社などの経由は殆どなく、直接に、スーパーやコンビニなどの流通分野や食品加工メーカーに納入される。取引先は1000社以上に上る。
開発済みのスライサーは約60種類以上に及ぶ。用途は、先に挙げた魚の切り身スライサーの他、肉の角切り、葱の輪切り、玉ねぎのみじん切り、ハモノ骨切り、ニンジンの輪切り、キャベツの千切り、など多種多様で、職人の技を機械化するのが同社の一番の仕事であり、食材カットよろず引き受けます!が同社のキャッチフレーズだ。
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最後に同社の製品開発と市場開拓の特徴について若干記しておきたい。
同社の製品開発は全て顧客からのニーズが起点であり、新製品を開発してから販売するというケースはまれである。
そして顧客の声は100%聞く。どのような顧客の要求にでも、限界を定めないで何とか応える。そうすれば仕事は無限にある、と佐々木さんは言っておられた。
タイや韓国に海外支店を設置しており、海外売上比率は約7%になるが、佐々木さんは、国内需要はまだまだある、細かい需要、ややこしい需要はいくらでもある、と言い切る。
内作と外注の比率について質問したところ、「1か月に何とか1万円で生活するという発想」を持って経営すれば、自然と自前主義に行き着くと佐々木さんは言う。
同社の場合、製品の企画、開発、製造、組立、保守に至る業務における内作率は80%と高い。その理由は、食品用スライサーは、中小企業でしかできない製品であり、売れても100~200台程度で、内作した方が安く上がる。加えて、自社で部品の製造から手掛けることで、顧客の要望に沿った製品を、自社の努力次第で自由に、迅速に作ることが出来る、というところにある。工場の中には、多機能のマシニングセンターやレーザー加工機、レーザー溶接機、自社開発の設備などが整然と並んいる姿は壮観であった。
佐々木社長
(背景:展示室)
フードスライサー
の開発風景
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