「つぶやき」の先駆け
株式会社サトーといえば、バーコードプリンターのシェア40%を占める自動認識サービスの大手である。この企業を今日の状態にあらしめたのは現会長の藤田東久夫さんである。
なぜサトーは、このように成長できたのか? それは藤田さんが考えついたイノベーションのための一つの工夫である。
「企業の成長にはイノベーションが必要だ。しかしイノベーションはそんな簡単にできるものではない」と悟った藤田さんが考え続けた末に得たのが、社員全員の意見やアイデアを大切にすることであった。そこで始めたのが3行提案だ。127文字によるトップへの「つぶやき」を社員は毎日行う。1976年に始めたというから、ツイッターが生まれる遥か昔のことだ。
この「つぶやき」によってサトーは小さなイノベーションの積み重ねを行い、厳しい経済環境を生き抜いて来た。普通に考えれば、このようなトップが始めた「つぶやき」のシステムは、ある意味では労働強化やトップによる従業員による監視といった側面につながる危険性があることは否定できない。しかし、サトーにはこのような事態が起こる余地がない。トップと従業員の間に開かれた信頼感があるのだろう。組織内に民主的なルールが敷かれているのだ。
このような「つぶやき」によって、サトーは幾多の成果を上げてきた。
たとえば、消費税が上げられた時、別表示か総額表示か、どちらを企業が採用するかが分からなかった時、いち早く、社員の「つぶやき」によって総額表示が多数を占めることを察知し、総額表示のバーコードプリンターの製造を開始。この業界での地位を不動にした。
この他、病院での、患者とり間違い防止システムや遊園地での顧客調査の方法に(バーコードを使用して、どの遊具が人気があるかを見極める)、社員の「つぶやき」のアイデアが生かされたという。
更に、社員の「つぶやき」は社内改革にも役立っている。社員が発するつぶやきによって、女子社員の制服廃止、飲み会などへの会社からの補助金支給、社内における日常のあいさつの仕方の変更などが生まれ、社員の当事者意識の高揚につながっている。
サトーには、「小さな現象は大きな変化の予兆」という認識を大切にする風土があるが、小さな変化を「つぶやき」を使って捉え、企業としてやるべきことを実効力のあるものにしていると考えられる。
by 八木: http://homepage3.nifty.com/yagikeieioffice/
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