女優・李香蘭さんの回顧
山口淑子さんは1920年生まれというから今90歳だ。従ってかなり前の世代の方なのでよく知らない。おぼろげに覚えているのは、彼女が李香蘭と呼ばれていた女優であったということ、後年は政治家であったことぐらいである。
NHK番組「世界わが心の旅・はるかなる旅路」を観た。その番組は、山口さんが生まれ育ち、女優として生きてきた満州、中国を回顧しながら旅する番組であった。 この番組で見る山口さんは、一世を風靡した華やかな女優という側面を脇に追いやり、過去を真摯に見つめ、回顧し、自省されていた。このような山口さんに親しみを感じた。戦争に翻弄された彼女の人生であった。
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山口さんは、戦前の満州国、中国、そして戦後の香港で李香蘭の名前で映画、歌などで活躍した。幼い頃から中国語に親しみ、奉天にいた時、幼なじみのロシア人女性リューバの母からの紹介で、イタリア人オペラ歌手のもとに通い、声楽を学ぶ。
その後、日本語も中国語も堪能であったことから、奉天放送局の新満州歌曲の歌手に抜擢され、日中戦争開戦の翌1938年には満州国の国策映画会社から中国人の専属映画女優「李香蘭」としてデビューした。そして多くの人々から中国人スターだと信じられていた。
日中戦争中には、「白蘭の歌」や 「支那の夜」などの映画に出演し、抗日から転向し日本人を慕う中国人女性を演じる一方で、「萬世流芳」(アヘン戦争で活躍した中国の英雄・林則除を描いた映画)など、中国民衆の抗日意識を鼓舞する映画にも出演した。
「萬世流芳」のヒットにより中華民国の民衆から人気を得た李香蘭は、ある記者会見で一人の若い中国人新聞記者から、「白蘭の歌」や 「支那の夜」などの日本映画に出演した真意を尋ねられる、「あの映画は中国を理解していないどころか、侮辱している。それなのになぜあのような日本映画に出演したのか?あなたは中国人でしよう。中国人としての誇りをどこに捨てたのですか?」と。
これに対し彼女は、「20歳前後の分別のない自分の過ちでした。今はあの映画に出たことを後悔しています。今後、こういうことは決して致しません。どうか許して下さい」と答えるや、記者会見会場に大きな拍手が沸いたという。
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その他、この番組では、終戦を上海で迎えた彼女が漢奸(中国人として祖国を裏切った)容疑で軍事裁判にかけられるが、親友である前掲のロシア人女性リューバの献身的な努力により、日本人であることが証明され無罪となったこと、そして二人の半世紀を経た感動的な再会シーンも描かれており、しんみりと感じさせてくれる番組であった。
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尖閣問題で日中両国がぎくしゃくしている今、この番組を観て、戦争というものの無意味さとそれに巻き込まれる民衆の悲しい運命について改めて考えさせられた。
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9月24日(水)15:30にNHKBSプレミアムで再放送の予定ですね。
投稿: 林 | 2014年9月21日 (日) 16時26分
9月24日(水)15:30にNHKBSプレミアムで再放送の予定ですね。
投稿: 林 | 2014年9月21日 (日) 16時27分