先日放映された『旅チカラ ヴェトナム 玉木宏 伝説の戦場 カメラマンの愛と真実』という番組を観ていて、今から48年前のヴェトナム戦争を思い出した。
俳優でありカメラマンの玉木宏さんが、故澤田教一氏(報道写真家)の足跡を辿りながら、澤田さんが撮影した家族を訪ねてヴェトナムを訪れる場面があった。ヴェトナムは私の大好きな国の一つである。我が国に似た国民性を持ち、謙虚で勤勉な国民である。それだけに一層この番組に惹きつけられた。
ヴェトナム戦争といっても知らない方が多いと思う。このヴェトナム戦争は、腐敗し、国民の支持を失った南ヴェトナム独裁政権を支援するアメリカが、民主主義を守るという美名の下に、南ヴェトナム解放民族戦線との間に行った大義のない戦争であった。特に1965年始まった北爆は非道で、悲惨を極め、人道主義的見地から世界各地から非難の声があがった。
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添付の写真のひとつは、澤田さんがヴェトナム戦争の最中、撮影した写真『安全への逃避』であり、もうひとつは澤田さんの仲間で、ヴェトナム人のフィン・コン・ウトさんが撮影した写真『戦争の恐怖』である。この二つの写真共ピューリッツア-賞を受賞している。この賞は卓越した新聞等の印刷報道に贈られるもので、大変権威ある賞である。澤田さんは受賞の3年後、戦火に逢い亡くなられた。享年34歳であった。


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澤田さんの写真では、米軍に爆撃された村で、戦火を逃れるために川を渡る二組の母親と子供たちが写し出されている。子供たちを守ろうと必死に泳いでいる母親の姿を見ていると、早く逃げて欲しいと、思わず祈りたくなるような気持ちにさせられる切迫感溢れた写真である。この写真が撮影されたのは1965年頃。今から48年前のことである。
今、この二人の母親は既にこの世にはいない。3人の子供たち(二人の女の子と一人の男の子)は立派に成長し健在だ。玉木さんは、澤田氏の足跡を辿りながら、当時子供であり、今は立派な大人に成長したこの3人の方を訪れ対談するが、彼らとの対談で、澤田さんの人間的はやさしい側面が窺われる:
彼らは、澤田さんがカメラを構えているのを見た時、敵だと思い、持っているのは鉄砲で殺されると思った、そして岸にたどりついた時は、これで自分たちの命は最後だと思った。しかし澤田さんはやさしく手を差し伸べてくれ、もう心配は要らないよと言ってくれた時、救われた気持がした、と語っている。今、彼らが母親との思い出として残っているのは、誰かからもらったのであろう、この澤田さんが撮影した写真だけだという。以後大切に保管しているという。澤田さんには感謝の気持ちで一杯だと語っていた。
番組には登場しなかったが、もうひとつのフィン・コン・ウト(Huynh Cong Ut
)さんが撮影した写真『戦争の恐怖』に写っている少女も今、立派な大人に成長しているということであった。真実を報道し世界に発信するために、命を賭けて活動していた澤田さんの素晴らしい生き方に感動させられた番組であった。
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