東北の旅・バスガイドさんのこと
10月末、東北地方を旅した。学生時代に友人とスリーピングバックを担ぎ、猪苗代湖から十和田湖、平泉へと旅して以来のことである。今回は某旅行社による3日間のバスツアーで、盛り沢山の日程で慌ただしかったが、楽しい旅であった。
旅を楽しくしてくれたのは、仙台在住のバスガイド、Tさんだった。彼女は、東北大震災の時、仙台のバス会社でバスガイドとして働いていたが、ある日、業務を終わりバスの掃除をしている最中に地震と津波に襲われた。バスは流され、会社も消失した。震...災後、仕事のあてもなく両親の家で無為に過ごし、将来どうしようかと考えていたが、そのうち、もう一度、バスガイドとして活躍したいという想いが昂じて来た。その時、神からのプレゼントというか、偶然に山形県のバス会社がガイドを募集していることを知人経由で知り、応募し採用されたのだという。
彼女のバスガイド振りは実に素晴らしいものであった。旅は仙台空港から、角館、田沢湖、発荷峠、十和田湖、奥入瀬渓流、平泉に至るものであった。彼女は、観光スポット地点や途中の移動中も、それぞれの地域の歴史、文化などについて、克明に勉強されていて、興味深い話を沢山聞かせてくれた。日本一人口の多い村・滝沢村のことや柳田国男氏によっていで有名になった「遠野」に関する民俗伝承など、語り部に成りきって説明してくれたことには感激した。
最後に彼女は、「皆さん、また東北へ来られた時、私に会ったら知らない顔をしないで下さいよ。しかし、もしかしたら、その時はお嫁にいっているかも知れませが」と言った。是非とも幸せな結婚をして欲しいものだと私は思った。
==============================
旅の最後に訪れた平泉。学生時代の旅で、宿泊費用を倹約するため、中尊寺近くの小学校に、無理を言って泊めて頂いたことを思い出した。中尊寺に着いて境内を廻っていると、昔見た同じ光景が幾つか眼前に現れ、奥州藤原氏が三代にわたって築いた栄華の面影が偲ばれた。
松尾芭蕉が中尊寺で詠んだ「五月雨の降り残してや光堂」の句碑が銅像と共にあった。句の意味は、「すべてを朽ちさせるように、毎年降り続ける五月雨も、この光堂(金色堂のこと)だけは遠慮して降り残したのだろうか。長い歴史を伝えるように、光堂は今なお燦然と輝いている」ということである。
| 固定リンク
「2.日記・随想・歴史紀行・音楽」カテゴリの記事
- 強行された五輪ではありますが、懸命に頑張っているアスリートには敬意を表したい(2021.07.27)
- 相撲道を守るには How to keep Sumo-do(2021.07.20)
- 大谷翔平さんはなぜ、皆に愛されるのだろうか(2021.07.14)
- 現代人が留意すべきこと(2021.07.10)
- テイカカズラ(定家葛)(2021.06.16)
コメント