伝統の染織工芸を教える学校
先日、京都へ行った時、平安神宮へ向う神宮通にある、染織の学校「アルスシムラ」のギャラリーを訪れた。今、書いている本の取材のためである。
学校は、志村ふくみと娘さんの志村洋子さんが、伝統の染織工芸を後世に伝えるためにと開設された。草木染と紬織を教える。
ホームページに次の様な一文がある。「私たち、志村ふくみ、志村洋子と、そのアトリエ工都機工房の営みは、自然と神々が一体だった古(いにしえ)の、織女の営みに似ているかもしれません。時代は激しく変化しても、地球という星が与えてくれる生命の本質は変わりません。私たちはそれらと親密にふれ合い、それらを言葉とし、織物に新たな美と活力を見いだしたいと願いつつ仕事をしています」...
日本古来の伝統を受け継ぎながら、後世にその技術と精神を伝えてゆきたいという気持ちがひしひしと感じられる。アルスシムラの願いは「魂の教育」だという。授業では、染めたり織ったりの手仕事を通して物に触れ、物の命に近づく、驚きと憧れの体験を大事にしてゆく。心が躍動する色彩体験は、芸術家としての魂を育てる。
ふくみさんが、染織を始めたのは31歳の時。植物の幹や根や実を煮出して絹糸を染め、紬を織った。日用の工芸品に美を見いだす柳宗悦の民芸運動への共鳴もあった。そして今、農家の女性の普段着だった紬を芸術の域に高めた。
90歳を前にしたふくみさんが、60年に及ぶ創作活動から一歩踏み出して工房を開いた理由は、東日本大震災と原発事故にある。『源氏物語』などでも表現されている日本の色彩は、豊かな自然から与えられた類いまれなもの。失われないうちに若い人に伝えなければ、という、やむにやまれぬ思いから」だという。
エッセイストでもある。大佛次郎賞を受けた「一色一生」などの著作がある。
| 固定リンク
「1.経営」カテゴリの記事
- 働かせ?法案:高度プロフェショナル制度(2018.06.29)
- 不誠実な政権(2018.05.24)
- “世界で一番貧しい大統領” ホセ・ムヒカ さん →この方と比べると日本の現状は淋しい限りです!(2018.03.03)
- マザーハウス・なんばパークス店訪問(2018.01.25)
- 明石順平著「アベノミクスによろしく」...(2017.12.20)
コメント