前回に続き、鈴木康吉さんの中学生時代の友人である女性「U・Kさん」からの6回目のレポートを下記に記します。
今回は、7月25日(浜鬼志別道の駅~宗谷岬)~8月12日(蘭越道の駅~弁慶岬)までの記録です。
鈴木さんの更なる旅の、安全、成功をお祈りします。
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我が家のスズムシが盛んに鳴き始めました。待ちに待った秋のかすかな気配です。お変わりなくお過ごしでしょうか。昨夜は瀬棚町あたり、江差まで80㌔のところまできました。北海道といっても暑く、日焼けの肌にはテリが出てきたようです。
鈴木康吉君からのリヤカーで日本一周のレポート、送付します。宜しくお願いいたします。
(U・K)
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7月25日(浜鬼志別道の駅~宗谷岬)
今日は宗谷岬と思うだけで足取りが軽くなる。北上は今日が最後だ。追い風に力をもらって午後3時くらいに着いた。途中変わった地形を見た。緑一色の丘陵、遠くに風車が何本も立っている。地中の水分が凍結や融解を繰り返えすことによって形成される地形で宗谷周氷河地形と呼ばれる。牧草地として活用され、ウィンドファームにもなっている。
夕方になると観光バスも一斉にいなくなり、駐車場には2台ほどの車。無料休憩所の二重扉の間の三畳ほどのところでテント張る。これがわが天国なり。絵はがき買って、最北端到達の知らせを書く。至上の時を過ごす。霧でサハリンが見えなくとも、温泉がなくとも、この足でここまで来たという実感が感激となって迫ってくる。
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7月28日(稚内温泉童夢から2㌔の山の中~牧草地)
霧がだんだん濃くなって、蒸し暑くなって来た。天塩町30㌔手前の牧草地で野宿。サロベツ原野は木もなく電柱もない。冬は地吹雪がすごいんだろう。勿論人間も住んでいない。途中コオホネ無料休憩所で、ニュージーランドからの旅人、自転車で稚内へ向かうペアと交流。片言までもいかない語学力ではラチあかず。廻りにいっぱい若者がいるのに誰も助けてくれない。
ツメタイもんだ。みつ豆の缶詰をプレゼントしたら、バナナ一本くれた。コオホネの説明をしだしたら「もう結構」と逃げて行ったワ、はっはっはーー!立派に国際交流したじゃん、
康吉くん!今夜は外燈なし。真っ暗やぞーっ!
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8月1日(羽幌温泉~小平町の海岸)
朝から快晴、太陽と追い風、坂なし。風景は単調やけど、これがいいののー。気温22、6℃。ちなみに名古屋は38、4℃。昨日濡れた靴が、夜、新聞紙を入れて湿気を取ったので、大丈夫だった。途中鰊御殿花田邸が保存されており、その横に北の道の駅があった。いわゆる鰊の番屋。
小平(おびら)町の入り口のトンネルの手前、海岸砂地で野宿。日没が7:02、ばっちり。稚内から狙っていたシャッターチャンス到来。雲の切れ具合もよく、遮る物なく空と海が真っ赤に染まって行く様をじっくり見ていた。至福の時、、、ただリヤカーにビールの在庫がないこと以外は。(写真1参照)
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8月4日(浜益~古潭漁港)
浜益からの道は相変わらずトンネルが多い。最初のは3㌔の登り。それを過ぎれば下りのトンネルばかり。途中トンネル内の避難場所で休息。冷蔵庫のなかにいるようで涼しく、虫も来ない。疲れていると車の音など気にせずに寝られる。厚田の町を流れる川にも鮭が登ってくる。厚田には3時に到着。運動公園など適当な野宿場所はあったが、ちょっと色気を出してコタンの漁港まで来たのはいいが、刈りっぱなしの牧草地(寝にくい。虫の関係)しかなく、建設現場を選んだ。
途中坂道を登っていたら、サイクリングの札幌の青年が「おじさん!田中陽輝さんと出会ったおじさんですね」「そうだよ」「これから札幌に帰り、近々余市へ行くので、余市で会えますか?」
ざっと計算したら、函館まであと540㌔ほど。小樽、余市は目と鼻の先、その後は景勝地のシャコタンブルーの積丹半島など目白押し。地球岬(室蘭)、襟裳岬、納沙布岬。知床岬(知床峠)、宗谷岬に神威岬、みんな「歌」に歌われてる岬。歩いて制覇とは、、、すごい!それ以上の言葉がない!"
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8月5日(古潭~石狩市)
「望来」で「ほうらい」と読ませる。その望来のコンビニでのこと。朝7時頃、80歳ほどのおじいさんが「昨日は車から見たよ。今朝は我が家の前を通った」と話しかけて来た。普通の格好じゃないから目立つのか!そこへ2台のバンが両脇に止まり、またいろいろ話しかけてきた。丁寧に応対するも、自分の朝食の時間が気になり、コンビニの店内へ。
出て来たら、リヤカーのベニヤ板の上に、小缶のビール3つ、酒の小ビン2本、スナック菓子にバナナ、アンパンに菓子パンが山のように置いてあった。お供えか!有難い、有難い!石狩市中心に向けて暑い中、歩いた。ふと見ると2台の車の中から若い女の人がこちらを両の手を合わせて拝んでた。これにはびっくりこいた。康吉くん、いよいよその域へ入ったかっ!石狩川の長い橋を上は川風が心地よかった。それ以外は♪「たいやきくん」の一日だった。
稲穂駅近くのコンビニでビールを買った。そこで石狩に仕事をしにきてる自転車に乗った青年に出会った。山登りが趣味で大切にしている記念のバッチをリュックから出して記念にくれた。野宿場所の行き方を尋ねたが、教えてくれるのはいいが、またこれがなにを言ってるのか理解不能!青森出身の青年だった。あっちゃー!イオンの横の公園を探し当てるのに苦労した。衣類を水洗いしてたら、歩くのに興味のあるお兄ちゃんが話しかけて来た。発心から修行に到る話で「康吉流」の時間が流れたことは言うまでもない。
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8月8日(余市~積丹町の入り口「山の天辺」)
6時に出発。一時間ほど歩いた所に野菜の出店。おおきなトマト4個で150円。食べてみたらトマトらしい味がした。おまけに茹でたトウモロコシを2本もくれた。これがまた甘くて美味しい。R229、上り坂の400Mのトンネル。そのあと2000Mのトンネルが3つ。歩道がしっかり整備されてた。積丹の町から2㌔のほどの峠の天辺で野宿。さすが涼しい。先ほどまで熊脅しの鉄砲の音がしきりにしていた。民宿が2、3軒あったから、きっと安全のためにしているのだろう。
トンネルの中では細長い蠅が頭の周りから離れずに付いて来た。外に出るとスズメバチが、手ぬぐいでは、たいてもはたいても仲間を増やして付いて来た。ほんまにあいつらはしつこい奴や!汗や臭いに寄ってくるのかも。仮眠していたら、声をかけられた。話しているうちに「海岸でバーベキューしてるから、ご一緒にどうですか?」って誘われ、「それは結構なことや」(写真2参照)
積丹町のトンネル崩落事故現場がここだって初めて知った。
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8月9日(積丹町入り口~神威岬から4㌔)
積丹半島の海岸線は海水浴客で賑わっていた。道路には多数の駐車で場所がなく、昼寝もままならず、歩き通すしかなかった。おまけに昨夜スマホで地図を検索した後、スマホの電源を切るのを忘れ充電切れ。そこで役立ったのがウーさんからもらった乾電池の充電器。今まで充電の容量が少なくあまり役に立たないと使わなかったが、今回だけは初めて有難いと思った。
海岸の監視員が言うには、昨日野宿した場所は熊出没危険度が一番高い所という。今更言うてもうても後の祭りやけど、民宿の鉄砲脅しは山から下りてこないようにとの脅しだった。そこに俺が寝てるんやぞ!それにしつこかった蜂の正体が分かった。アブだと監視員。
峠が暑かったのでシャツを脱いで歩いた。その汗の臭いに寄って来たんだ。あいつらの爪が背中にあたると痛いんやぞ。朝もテントの周りをうろついていた。
積丹灯台へは山登りのようなもの。リヤカーは積丹川のほとりにおいて、空身でキャンプ場へ。それから又、山の中腹を歩くイメージで灯台へ。50~60m の断崖の下には積丹ブルーの海が広がる。神威岬へも歩を進めた。岬の高さは80m、突端には灯台。眼下に広がる数々の奇岩と青い海を充電したスマホで撮りまくった。遊歩道からは300度くらいの視界で楽しめた。神威岬でも言われた。
「昨日の野宿場所は一番熊が出るとこやぞ。今日はこの先の3っつ目のトンネル手前にトイレがあるからそこで野宿がええよ」おかげで今夜は安心や。トイレには「ご自由にお使い下さい」って書いてある。ちょっと洗濯もさせてもらいますわ。ーーーそれがいい!熊よりもアブに注意だよ、康吉くん!
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8月10日(神威~兜トンネル)
神恵内(かもえない)の町を通り過ぎ、泊原発8㌔手前まで来た。立派なトイレがある場所を教えてもらって野宿を決めた。朝から食料が底を尽き、足取りも重く、トンネルを5本。2500mのがあった。やっとの思いで神恵内の岡田食料品店へ飛び込んだ。そこで地元の10人ほどの団体さんに出くわした。その中の会長さんらしき人がリヤカーの伊能忠敬を見て、興味を示してくれた。ご自分も測量に関心があるとのこと。
そこでどのような会話がなされたかは、別れ際に会長さんが食料店で買い求めた地酒「神威」を一本激励にと手渡してくれたことで充分想像がつく。積丹半島の西側は絶景の連続。故郷の二見の夫婦岩しか知らない
自分にとっては、感動の連続。ビューンビューンスピードを出して車を飛ばす若者たちよ!お前達は勿体ない時間の使い方をしている!函館まであと364㌔弱。 見えて来たぞ、北のゴールが。
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8月12日(蘭越道の駅~弁慶岬)
8:40ケイタイが鳴った。「昨日の晩なあ、業務連絡を終え、テントで♪月の砂漠をうととったんんや(歌っていた)。そしたら外人さんが来て、なあ、、はあ、、最高の夜になったあ」と弾んだ声。 彼はTodd Wilkinson 4年半前に来日。茨城県鹿島市の小学校で英語を教えてる。今夜はこの蘭越(らんこし)の道の駅「シェルプラザ」で野宿。
リヤカーの絵を見せて伊能忠敬の話から始まり、岡倉天心六角堂の美術館で買い求めた「広重」「北斎」「歌麿」の絵を広げながら、夜の更けるのも忘れて話に花が咲いた。Toddはあまり流暢ではない日本語で話してくれたおかげで、それが自分の会話のスピードに近く、助かった。
夜が明けて、彼は函館から船に乗って帰る由。別れ際にトマトを差し出したら、青いバナナをくれた。この前のニュージーランド人もそうだったけど、味覚の違いでかたくで歯ごたえのあるバナナの方を好むらしい。
Toddからのメッセー ジ:
To Mr.Suzuki 、
Thank you for your lesson about INOUさん.I could understand your story and I was happy to know that he was
your inspiration. Inspiration is very important! Have a safe trip and please return to 名古屋 safely.
今日は弁慶岬の突端、目の前に真っ黒な弁慶の像が立ってる。無風で日中暑かった。テントの中は自分の体温で暑くなる。外へ出て涼むのはいいが、中へ入る時に相性のいい蚊が付いてくる。それが難儀じゃー!
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写真1:8月1日 小平町からの夕日
写真2:8月8日 バーベキューにご招待される。
その他:
写真3:8月15日 R229海岸沿いの奇岩
写真4:8月16日 大成町近辺




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