人文科学の必要性
文部科学省が全国の国立大学人文科学系の学部や大学院の縮小ないしは廃止を促したのに対し、日本学術会議が7月、反対声明を出した。このことに関して、跡見学園女子大学教授の奥田洋子さんが意見を述べられている。もっともな意見である、共感を覚えた。
奥田さんは、次の様に、外国の識者の話を引用され、論じられている。...
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文学は、人間という存在への洞察に満ちた、言葉による芸術である。これに関して、英国の作家カズオ・イシグロ氏は「小説とは、情緒を伝えるものである」と。
また、米国の認知学者パトリック・ホーガン氏は、文学がどのように読者の感情を揺さぶるのかを論じている。「作家は、作中人物の微妙な情緒をつぶさに描写し、かつ共感や慈しみなどを読み手の心の中に引き起こす。時として、不快な感情を与えることもある。そんな時は、気持ちを直ぐに立て直すしなやかさも生み出すのである」と。
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そして、グローバル化に伴う異文化間の摩擦がクローズアップされる中、衝突を避けるために寛容性、言いかえると「情緒的な成熟」が求められている。そんな時代だからこそ、文学を学ぶことの意義は大きい。
奥田さんは、更に次のようなことも述べている。
文学は初読では終わらせないで、再読しながら作品を分析する方がいい。更に、作品の意味や魅力、あるいは解釈などをまとめ、人に伝えることを御奨めする。それによって作品を読み取る感性と論理を組み立てる能力が養える。何故ならば文学作品はもともと論理的に書かれているわけではないからである。逆説的だが、だからこそ文学は思考力を鍛える力を秘めている。
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人間社会は、工学や理学のような実用的な科学技術だけでなく、文学、哲学、歴史の様な人文科学があってこそ調和のとれた発展ができるということなのである。
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