マーティン・ファクラー「安部政権にひれ伏す日本のメディア」
マーティン・ファクラーさんというニューヨーク・タイムズ前東京支局長が書かれた「安部政権にひれ伏す日本のメディア」という本を読みました。また中島岳志さん・島薗進さん共著の「愛国と信仰の構造~全体主義はよみがえるのか~」も併せて読みました。今日は、前者のマーティン・ファクラーさんが述べられていることについて、私が興味を感じたことについて記したいと思います。
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彼は10年間、日本に特派員として滞在した、普通の常識的な考えの持ち主です。今後、日本のポジティブな部分を英語圏に発信する仕事を通じて、長年暮らしてきた日本に恩返ししたいと述べています。
マーティン・ファクラーさんによれば、日本は今、特定秘密保護法が成立し、確実にアメリカ型の社会へと変質していると言っています。この流れを食い止めるために今、国民とメディアが立ち上がらなければ、いずれ権力は必ず本性を剥き出しにしてくる、と警告してくれています。
ごく最近では、高市早苗総務相が、政権に都合の良い報道をしなければ放送局の「電波停止」をすると発言し、その後野党によりこのこ...とを追求されても、政権によるメディア支配、自由な言論封じの可能性を肯定しています。恐ろしいことです。
アメリカでも政権からメディアにかかる圧力は日本よりも強いそうです。しかしアメリカではあるジャーナリズムが政権の圧力を受け、危機に瀕すると、他の新聞や報道機関が会社やメディアの垣根を越えて擁護するためのメディア・スクラムを組んでキャンペーンを張るのだそうです。
しかし日本ではどうでしようか?
日本では、従軍慰安婦問題における「吉田証言」や原発の「吉田調書」に関して朝日新聞に小さい不適切な記事が掲載された時、安倍政権はことさらに朝日新聞を攻撃し、慰安婦問題が全く存在しなかったような態度を取り続けました。他のメディアも朝日新聞を擁護するどころか、攻撃しました。特に右寄りの政権迎合的な産経新聞や読売新聞はその程度が顕著でした。
マーティン・ファクラーさんは、このような時でも右、左に関係なくメディアは一体となって権力に対抗して欲しかったと述べています。この時、朝日新聞は率直にその部分の誤りを認めて訂正記事を出せば良かったのです。全面的に記事を取り消すからおかしなことになったのだと、とも述べています。
話はそれますが、「戦時中に日本は悪いことをした」と認めることは、常識的で普通の考え方です。それを認めた上で「だが今の日本は違う」といった方が、相手側も納得します。あんなにベトナムに悪いことをしたアメリカが今、ベトナムと友好的な関係を築くことになったのは、アメリカが「あの戦争は間違いだった」という本心から発した意識を持ち、ベトナムもそれを認めているからである、と言っています。
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英国の新聞「ガーディアン」やアメリカの新聞「ワシントンポスト」などが最近相次いで、安倍自民党政権によるメディアへの圧力を批判しています。これらの批判をしっかりと受け止める必要があります。このことを放置すると、戦前の大政翼賛会の下での言論弾圧に繫がる怖れがないとは言い切れません。戦前、政権批判する新聞は身の危険に晒されるのを避けるため、大本営発表を垂れ流す新聞に成り下がり、軍国主義的傾向を強めるのに協力し日本を破滅させました。
今中国で行われている言論弾圧を見ていても悲しい気持ちになります。
こんなことにならないように、健全な市民社会を維持するためにも、権力は常に監視する必要があります。
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