不都合な事実が隠蔽されないように
『チェルノブイリの祈り~未来の物語~』という本があります。その著者、スベトラーナ・アレクシェービッチさん(ノーベル文学賞受賞者)さんは、その中で次のように述べています。
「・・・この本は・・・チェルノブイリを取り巻く世界のこと、私たちが知らなかったこと、殆ど知らなかったことについての本です。見落とされた歴史とでもいえばいいのかしら。・・・人間や人間の本質に何が起き、国家が人間に対していかに恥知らずな振る舞いをするか、こんなことを知ったのは私たちが最初なのです。国家というものは自分の問題や政府を守ることだけに専念し、人間は歴史の中に消えていくのです。・・・だからこそ、個々の人間の記憶を残すことが大切なのです」。
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上記の彼女の言葉を補足しますと。
チェルノブイリ原発事故は、ソ連共産党独裁政権下で起こりました。その政権は、国民の間に不安、不満が蔓延し、政権への批判が大きくならないように、不都合な事実を隠蔽し、放射能の影響など事故後の実態を国民に知らさないようにしました。
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現在の日米両国では、程度に差があるとは云え、これと類似した、不都合な事実を隠ぺいする動きが見られます。
トランプ政権は、自分に批判的なメディアは「偽ニュース」と攻撃しています。たとえば、就任式での観衆の数をめぐり、8年前のオバマ政権の時よりかなり少なかったという報道に「嘘だ」と決めつけたことや、「不法移民が投票しなければ、自分の得票数はクリントン氏より上回った」など、根拠のない発言を繰り返しています。
一方、我が国の現政権においても、南スーダンの陸上自衛隊の日報に「戦闘」があったと記されていながら、防衛相が「事実行為としての殺傷行為があったが、法的な意味の戦闘行為ではなかった」などと、他の閣僚においても詭弁を弄する発言が多発しています。
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このように権力者が「嘘」を「嘘でない」と繰り返し否定することで、「何が正しいかという社会の判断基準が次第に壊れ、麻痺していくこと」は危険なことです。当たり前のことですが、「嘘」を本当だと皆が信じてしまうような世の中にならないように、メディアは真実を伝えていく必要がありますし、国民も冷静に“自分で真実を判断する目”を養っていく必要があると感じます。ヒトラー・ナチス政権下のドイツや大政翼賛会の下での日本のような悲惨な世の中に戻らないためにも。
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