杉本苑子さんのこと
杉本苑子(すぎもと・そのこ)さんが先日亡くなられた。享年91歳。吉川英治氏に師事し、門下生として10年近い修業をした。1963年には、幕府の権力に抵抗しながら治水の難工事を完成させた薩摩藩士の姿を描いた「弧愁の岸」で直木賞を受けた。この小説を書いて、杉本さんは、人は時代に逆らえぬもの、権力とはむやみに人を苦しめるものと考えさせられた、と述べている。
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杉本さんは、学徒出陣の見送りや敗戦を思春期に体験したことが原体験となっており、そのわけか、弱者の視点から書かれたものが多い。
“天声人語”の言葉を借りれば、・・・英雄を描く時よりも、舞台から落ちて辛酸をなめた者を描く時。政略結婚を強いられた姫君、失脚して幽閉された能吏(のうり)、正室とのいさかいに悩む側室・・・。そんな人生を好んで取り上げた。親しかった作家・永井路子さんとの対談で、再び日本がおかしくなったとしても、「大政翼賛会の小説を書くくらいなら私は筆を折る」と語っているのが印象的だ。
「小説に恋をした」と言い、生涯独身を通した。そして生前から著作権を含む全財産を名誉市民となった静岡県熱海市に寄贈する契約をしており、30年以上暮らした熱海市に全てを託して亡くなられた。
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恥ずかしながら、私は杉本さんの本を、しつかりと読んだことがない。是非、この後、「弧愁の岸」などを読んで見たい。そして、杉本さんのような視点で、今の世の中をもう一度見つめたくなった。杉本さんの他の著作には、「マダム貞奴」「穢土荘厳」などがある。
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