奈良・長谷寺を訪れる
奈良の長谷寺を久し振りに見たいという気持ちが募り、先週、家内と共に長谷寺を訪れた。前回訪れたのは、結婚して間もない頃で、家内の両親と一緒だった。長谷寺といえば、牡丹(ぼたん)で有名だが、その時は牡丹の花を十分に楽しんだ。今回、牡丹はまだ蕾の状態で楽しめなかったが、その代わり桜がまだ満開に近い状態であった。
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長い石の登廊を上って本堂へ。登廊の両側には牡丹園が続く。本堂からの眺望は見事だ。長谷寺は山に囲まれた美しい場所で、初瀬川が流れる谷間から山腹にかけて沢山の堂宇が点在する。長谷寺は「こもりくの泊瀬(はつせ)」と言われたところにある。「初瀬」は古くは「泊瀬」とも書かれ、のちには「長谷」も使われるようになった。そのため、現在、地名は「初瀬」、寺の名前は「長谷」と書くらしい。万葉集に、「隠国(こもりく)の泊瀬」という言葉がよく登場するが、
「隠国の」は泊瀬にかかる枕詞で、この地が山に囲まれていることを表している。長谷寺は、また「花の寺」とも呼ばれ、桜、牡丹などで有名だ。
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何と言っても長谷寺がよく知られているのは、本尊の十一面観音菩薩立像の存在にある。長谷寺は何度も火災に遭っていて、現在の本尊も室町時代に東大寺仏師の実清良学の手でつくられたものだ。高さが三丈三尺(約12m)、木造仏では日本最大級の大きさである。そしてこの観音像は「長谷寺式」と呼ばれる独特の姿をしているのだという。左手には観音像らしく宝瓶をもち、右手には地蔵像のような錫杖と念珠をもっている。それは観音と地蔵菩薩が合体したもので、長谷寺の本尊は、観音であると同時に地蔵の優しさも秘めているのだという。
特別拝観料を払って、この観音像を近くで拝観したが、足元から見上げる観音像の姿は壮麗で、慈悲に包まれているような感じを覚えた。昔人が、この世の憂いや悩み、病苦や悪心を除いてくれる仏として畏敬の念を抱いていたであろうことがよくわかるような感じがした。添付写真の「結縁の五色線」は拝観する時に頂いたものである。これを身につけることで観音様とご縁が結ばれるというしるしになるのだという。この五色は、仏の五つの智慧をあらわす。
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有名な牡丹の花には次のような言い伝えがある。
この牡丹は中国の唐時代の皇妃・馬頭夫人(めずぶにん)に由来するという。彼女は顔が長く鼻が馬に似ていたため、馬頭夫人と呼ばれたらしい。日本の長谷観音の霊験あらたかなることを聞いて、何とか美しくなれるように、と毎日長谷寺に向って祈禱をした。すると、素晴らしい美女になれたというのだ。そのお礼に、彼女は宝物とともに牡丹を数株、寺に献納した。それが、今の長谷寺の牡丹園の始まりだという。(五木寛之著「百寺巡礼・奈良より引用」。)
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