「朴の木」
今住んでいる箕面で、山歩きを始めた頃、こんなに大きな葉を持つ木があるんだと、驚いたものだ。朴の木(ホオノキ)のことである。落ち葉も大きく目立つため、直ぐにそれだと分かる。朴の木は、日本特産の落葉高木で全国各地の山に自生している。樹高20~30m、幹は径1~1.5m。その葉は大きいもので、長さ40cmにもなる。花は淡黄色で5~6月頃、高い梢の葉の中央に上向きに咲く。
その大きな葉は「ホオバ」と呼ばれ、古代には食器の代わりに用いられた。別名「ホオガシワ(朴柏)」の「ホオ」は「包(ほお)う」から。また、古代は「カシバ(炊し葉)」と呼ばれ、それが「カシワ」となった。当時の「カシワ」とは食物を盛る葉の総称である。
大伴家持が旅先で見かけた朴の木の葉で、天皇の祖先の御代に思いを馳せながら、お酒を飲んでいる風景を歌った万葉集の句がある
「皇神祖の 遠御代御代は い布き折り 酒飲みきといふそ このほほがしは」
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現在でも、葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用される。飛騨高山地方の郷土料理「朴葉みそ」「朴葉寿司」などは有名である。奈良県吉野の名物、「柿の葉寿司」の元祖は「朴葉寿司」だという。最近は村おこしも兼ねて、道の駅などで「朴葉寿司」が販売されているようである。新芽時期の5~6月が最も香りがよく美味しいそうだ。しかも朴葉の防腐作用で日持ちするので重宝されている。
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朴の木は、食用以外にも使われている。材が堅いので下駄の歯(朴歯下駄)などの細工物に使われる。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。
我々の祖先は、自然の恵みを上手く利用したものだとつくづく思う。
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