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2019年12月26日 (木)

ジェンダー視点から考察した良書。前田健太郎『女性のいない民主主義』


ある新聞の書評で、前田健太郎 著『女性のいない民主主義』という本が目にとまり読んでいる時に、図らずもフィンランドで「世界最年少34歳の女性首相」が誕生というニュース。日本とは別世界のように思われました。

下記は、その本のカスタマーレビューをアマゾンに投稿した内容です。

<カスタマーレビュー> ...
日本における、女性政治家の増加の方策を、ジェンダー視点から考察
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本書は、社会を良くするには女性の存在が必要である、女性が軽んじられる社会は、弱者も少数派も差別する社会であるとし、そのためにはどうすればよいかを、“ジェンダー視点”から考察した良書である。


今、世界の流れは、フィンランドに世界最年少の女性首相が誕生したことに象徴されるように女性の存在感が日増しに高まっているが、日本の現実はというと、世界経済フォーラムが発表した男女格差の報告書の最新版では、日本は153ヵ国のうち、過去最低の121位に低迷している。日本の政治は、先進国の間でも、男性の手に権力が集中している特異な国なのである。

そこで、本書は、なぜ日本には、女性が活躍できる土壌がないのかと、女性も男性も(因みに私は男性です)が漠然として考えていたことを言語化し、極めて平易に事例や表を交えて説明している。ジェンダー問題に取り組んでおられる女性の方にとって、本書は問題解決へのヒントを与えてくれるだろう。
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さて、具体的には次のような点が、ジェンダー問題解決のためのヒントとして印象に残った。

★男性と女性では政策的関心が異なる。男性は、経済政策や安全保障政策など、女性は、社会福祉政策(育児、介護)、児童の教育、女性の職業支援などに関心が深い。→女性の意見を代表する女性議員が求められる。

★男性が参加者の多数を占める集団では、女性は意見を言いにくい。クリティカル・マス理論に従えば、女性議員の数が30%程度になって初めて、女性は本来の力を発揮でき、男性と対等に意見を言えるようになる。フィンランドでは、1906年世界で初めて女性が被選挙権を獲得した。30%という値は、組織において女性が能力を発揮できる下限とされる「クリティカル・マス」として各国の政府機関で用いられているが、1983年、フィンランドが最初にこれを超えた。

★既存の政党が、男性優位の性格を改め、女性を擁立することが必要である。

★日本の女性議員数が先進国よりも低い水準にあるのは、ジェンダー・クオータが導入されてこなかったことにある。これは、女性議員の数を一定数以上に割り当てることである。

★個人モデル/男性稼ぎ主モデルという考え方:北欧のような、個人モデルの福祉国家においては、特定の家族像は前提とされず、夫と妻は対等な存在として、仕事で収入を得るとともに、家事や育児においても協力することが想定される。どちらも自らの資格で社会保険制度に加入し、自らの拠出に基づいて給付を受ける。また、個人モデルの福祉国家はケアを社会化する。即ち、育児や介護を家族で抱え込むのでなく、政府が積極的に社会福祉サービスを共有することで、男女共働きの家族を支える。シングルマザー、ワーキンマザーなどにも福祉を供給する。これに対して日本は、男性稼ぎ主モデルである。

★スウェーデンでは、第二次世界大戦後の経済成長期に労働力不足が生じた際、多くの大陸ヨーロッパ諸国のように移民を受け入れるのではなく、女性の労働参加を促進する道を選択した。その結果、女性の社会進出を支援するために、公営の保育サービスや社会福祉サービスが拡大し、そこで雇用された女性労働者が労働組合に組織化されることを通じて、女性の発言力が強まった。これとは対照的に、日本では高度経済成長期に政府が財政的な事情から公務員数の抑制に乗り出したため、公共部門が女性の社会的進出を後押しするという現象は起きなかった。

★少子高齢化が、男性稼ぎ主モデルの福祉国家の帰結であるだけでなく、それが持続する原因ともなっている。日本は育児支援が充実する前に高齢化が進行し始めたため、政策転換が難しくなっている。これに対して、仕事と育児の両立支援を早い段階で充実させたスウェーデンでは、女性と男性のワークライフバランスを支援する制度が早い段階で整ったことで、少子化の進行が食い止められている。

★社会には、男性は男らしく、女性は女らしくなければならないという、ジェンダー規範と呼ぶ目に見えないルールが存在する。このジェンダー規範は、決して人間の生物学的な本性を踏まえたものではなく、それは何らかの形で社会的につくられたものである。ジェンダー規範は、男性と女性に異なる社会的な役割を与える(性別役割分業)。男性は、仕事に就き、家族を養わなければならない。女性は、家庭において、家事や育児をおこなわなければならない。この規範は、「男は仕事、女は家庭」といった言い回しに表されてきた(例:良妻賢母)。

★女性はジェンダー規範に従って行動する限り、「ダブル・バインド」に直面する。一方には、積極性があり、競争的な、「男らしい」行動を求める組織規範があり、他方には優しく、包容力のある、「女らしい」行動を求めるジェンダー規範がある。

★政治が「社会に対する諸価値の権威的配分」を行う行動だとすれば、男性と女性の地位の不平等も、大きな争いの種となるはずであるが、重要な政治争点として認識されてこなかった。なぜか?女性が声を上げてもその力が弱く認識されなかったからである。例えば、非正規雇用を巡る問題は、それが女性の問題である間は争点化されなかったが、2000年代に若手男性の非正規化が進んで初めて争点化した。

★男女の不平等が長く政治の争点となってこなかったことの原因の一つは、マスメディアがアジェンダ設定を行ってこなかったからである。本やSNSがジェンダー争点化を後押ししてきたことは間違いない。MeTo 運動はその一つ。この影響は日本では今のところ限られている。

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