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2020年3月16日 (月)

鴨長明『方丈記』

<鴨長明『方丈記』>
近くを散歩していると、ため池の水際にある柳が芽吹き始めている光景が目に入りました。新芽をのせて、たおやかに揺れる柳は春の訪れを一層感じさせてくれます。眺めていると、新型コロナウイルスのことなど忘れてしまいそうです。
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さて今、新型コロナウイルスの話は持ち切りですが、人間社会を悩ます災害(竜巻、飢饉、洪水、地震、疫病)について、鋭く切り込んだ記録を残した鴨長明が思い出されます。彼の代表的な著作『方丈記』にはそのような災害の記録が沢山記されていて大変興味深いです。

『方丈記』の冒頭にある、「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず・・・」というフレーズは、よく知られています。我々日本人の多くが共感を覚える「無常観」に溢れたフレーズです。これを、ピーター・マクミランさんという、アイルランド生まれの方が実にうまく訳されています。日本人とよく似た小さな島国の出身者ゆえの、同じような感性(無常観)が生かされているのだなあ、と私は思いました。
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行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。(『方丈記』冒頭 鴨長明)
The current of the flowing river never ceases, yet the waters never remain the same. In places where the current pools, bubbles from on the surface, burst and vanish while others form in their place, never for a moment still. People in the world and their dwellings are the very same.
(by Peter Macmillanピーター・マクミラン,アイルランド生まれの翻訳家・研究者)
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ところで、鴨長明のことですが、彼は古来の名族で京都の上賀茂・下賀茂神社の氏神を祖とする鴨一族に生まれました。父は下賀茂神社の神職のトップである宮司を務めた人です。鴨長明は大社の御曹司だったのです。しかし彼の青春時代は「保元の乱」「平治の乱」などが起り、源平の争乱から平家の興亡に到る時期と重なります。彼が18歳の頃、父が病死、一族の権力争いの渦中に放り出されます。父亡き後、祖母の屋敷に住むも、30歳でその屋敷を追い出され、大原を経て最後には人里離れた日野(京都市伏見区)に“方丈の庵”を構え住む。54歳の時でした。この日野は無人の深山でなく、人里に近くて生活には困らないところでした。『方丈記』は彼が58歳の時の作品。この方丈の庵で、竜巻、飢饉、洪水、地震、疫病などの天変地異と遭遇した生の経験を基に、無常観に満ちた文章を、格調高い和漢混淆文で記し、生涯を閉じました。享年62歳。

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